考えよ!なぜ日本人はリスクを冒さないのか?(オシム)を読みました!
考えよ! ――なぜ日本人はリスクを冒さないのか? (角川oneテーマ21 A 114) (2010/04/10) イビチャ・オシム 商品詳細を見る |
相変わらずこの人はまわりくどいな(笑)
この本はオシムが4月10日に発売した本です。
オシム自身、Numberやスポルティーバに引っ張りだこみたいなんで、何度もオシムのインタビュー記事を見ていて大体彼の考え方は理解していました。
それらを見ていて、オシムはサッカー好きなんだな~って事がまずわかります。
この本でも何度も出てくるアフリカ・ネイションズ・カップ(アフリカ選手権)やヨーロッパサッカーをよく見ているのがわかりますし、それらと比較して話をするのでそれについてはわかりやすい。
あまり多くを語らないイメージもありますが、酒が入ると饒舌になって長時間持論を話してロングインタビューになっている記事も見ました。
だた、いつも通りの抽象的な表現も多く、相変わらずまわりくどいっす。
いろいろ見ての僕の結論なんですが、
オシムは代表監督よりクラブ監督が合っているのでは?
オシムが日本代表に提言しているサッカーは、オシムが監督をやっていた時に目指していたものと変わりません。
ジェフ千葉(当時はジェフ市原)を率いていた時と同じサッカースタイルを代表にも持ち込もうとしていたのは明白です。
考えて走るサッカー
もしくは
ボールも人も動くサッカー
ですよね。
僕はマスコミが「ボールも人も動くサッカー」=「運動量の多いサッカー」に勝手に解釈していると思っていて、いやいやそういう事を言っているんじゃないだろって思っていました。
運動量を増やすって言う意味じゃなくて、頭を使って的確なポジションに向かって走ることだろ!って考えていました。
ただね。
この本を読んでみて、僕の解釈ももちろん合っていたのですが
実際に運動量も増やせ!!
って事でもあるようです(汗)
0対3で負けたオランダ戦。
残り15分ぐらいでガス欠し、3点を一気に取られました。
この時に「90分間走り続けるのは無理だ」という風に言われましたよね。
オシムは
90分間走り続けなければだめだ!!
と書いているんですよ。
まぁ、確かにヨーロッパのスター選手なんて走ってないイメージですが、実際は日本人より全然走っている距離は長く、それが現代サッカーのトレンドなんでしょうね。
さらに日本人の特徴として「勤勉さ」「俊敏性」などを上げていて、それを生かすためには走り勝つしかないという結論でしょうか。
今からそれを徹底させるのは難しいな~
そして、題名にもなっている「なぜ日本人はリスクを冒さないのか?」については、「W杯で日本は弱者なのだから負けたって失うものは何も無いだろ。ならリスクを背負って攻めなさい」という意味です。
これは賛成。
岡ちゃんがベスト4を目指すと言っても、本田さんが優勝目指すと言っても、世界は「日本は全敗で予選敗退」と思っているでしょう。
これは絶対に優勝をもって帰らないといけないブラジルなどに比べれば、激しくプレッシャーが少ないですよ。
「負けて当たり前。勝ったらすごい。」
一番楽なポジションであり、これだけ開き直れればジャイアントキリングもありえる。
開き直って派手にやってくればいいじゃない!!
オシムはこういう立場であるからこそ、守りじゃなくて攻めないといけないと言っています。
ただ、日本に限って言えばオシムは代表監督よりクラブチームの監督の方が適任に感じました。
オシムは長い期間を使って、その持論を選手に浸透させていくタイプだと思うからです。
オシムの言う走り勝つサッカーも理解できますが、やっぱりクラブチームでやっていないことを日本代表で突然やれといわれても出来ないんじゃないでしょうか?
例えば遠藤や俊輔はJリーグでは走ることを求められていません。
チーム内のバランスを取ったり、パスを出したりするのが役割です。
この2人のディフェンス面の弱さも指摘しているのですが、これもガンバやマリノスでは求められているとは思えません。
いいか悪いかは別にして、この2人が代表に来たら突然長友レベルで試合中ずっと走れるとは思えません。
バルセロナとスペイン代表なんかはいい例ですが、バルサでやるべき事とスペイン代表でやるべき事は一緒ですよね。
スペインやイタリアやオランダやドイツなど、リーグの特徴がはっきりしていて、それを代表が踏襲しているならばそれが一番いい形です。
しかし、日本はそうではないと思います。
オシムがジェフでやったサッカーは、本当に素晴らしいサッカーでしたが、その後同じようなコンセプトを話している監督はいてもあの時以上になっているチームはありません。
そして、ジェフでもあの状態に持っていくまでに2~3年掛かっています。
日本のJリーグの戦術を見る限り、トップの選手を集めたとしても、数ヶ月に1度の合宿などではあのサッカーにはならないように感じます。
オシムもそう感じたのか、日本代表に考えて走るサッカーを植え付けるための手段はジェフの選手を代表に呼ぶことでした。(本でもそう書いてある)
一番簡単かつ楽な手法ですが、僕はやっぱりこのやり方はよくないでしょ。
ジーコもアントラーズをひいきにしてましたが、オシムはやり方が露骨過ぎました。
だから、クラブチームの監督になって年月を掛けて育てて、その選手を代表に送り出す立場の方がいいと思うんですよね。
それかJリーグがもっとレベルアップして、目先の1勝ではなく全チームが共通の目標を持って指導するか。
オシムにはどこかJリーグの監督にまたなって欲しいですね。
そして、W杯の戦い方。
オシムは「グループEは、難しくもないが簡単でもない」と言っています。
やはりキーポイントはカメルーン。
カメルーンというかアフリカ全体に言えることですが、ヨーロッパに移籍する選手が増え、高額年俸をもらうようになってからアフリカサッカーは衰退したと言っています。
カメルーンには勝てる。ただ、もしいい結果が出なくても格下なんだから当然だと思って気持ちを強く持ち続けなければならない!だそうです。
僕もどこを見ても「初戦のカメルーン戦が大事」と言われていて、それには危機感を感じています。
逆を言えばドイツW杯のオーストラリア戦みたいに、カメルーンに負けた時点でW杯が終わってしまった雰囲気になる可能性があるからです。
選手は教訓を生かしていると信じていますが、オシムの言う通り「カメルーン戦がすべてではない」とサポーターも思わないといけないと思います。
オランダについては「サイドをシャットアウトせよ」と書いており、要はオランダの長所は短所にもなると言うことです。
デンマークについては「現地での2試合を分析せよ」「日本の俊敏性を生かせ」。
そして、3チームとも相手をリスペクトしながらも、勝ちに行くという気持ちを忘れてはいけない。
それがたとえオランダでも最初から諦めてはいけませんね。
この本は明らかに今の日本代表に対する提言であり、南アフリカW杯についての提言です。
もし、興味がある方はW杯開催前に読むことをお薦めします。
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